サイコパスを操作する

サイコパシーの理解から対策まで

自称サイコパスを見抜き操作する。

 

今回は、「自分(または誰か)は、~だからサイコパスだ」と考えたとき、それは科学的に妥当なのか検討できるようになるネタを紹介しよう。

 

まず復習すると、サイコパスの直接的原因として考えられるのは遺伝的要因だった。

(約3500組の双生児を対象に調査した比較的大規模な研究では、サイコパス傾向である冷淡さ・情動の欠如の成分は7歳児のころにすでに見られた。この研究によると、h^2=0.67で優位に集団遺伝性が見られた。つまり、冷淡さ、情動の欠如の成分の3分の2が、遺伝的要因によって説明される)

 これを踏まえた上で、次の要因がサイコパスとどう関係しているのかを見ていこう。

 

環境ストレス

「俺、小さい頃に虐待受けててさ、サイコパスなんだよね笑」

 

(もっともらしい根拠)

虐待などの環境ストレスは、海馬の機能低下を引き起こすことが示唆されている。

また、反応的攻撃を調節する基本脅威回路も環境ストレスの影響を受ける。

最後に、脅威に対するホルモンの反応に対して、環境ストレスが作用する。

 

ストレスと海馬の作用機序は以下の通り。

  1. 扁桃体がストレス・脅威に反応する
  2. 視床下部にシグナルを送る
  3. 視床下部が下垂体に作用
  4. 副腎皮質刺激ホルモン(ACYH)が放出
  5. ACTHが血流から副腎へ輸送される
  6. ステロイドホルモンのコルチゾールが分泌される
  7. コルチゾールが海馬の受容体に結合する

 

この一連の機能は、通常は副腎のストテロイドホルモン放出の制御システムの一部だ。

しかし、ストレス下に長時間おかれると海馬の機能が衰え、ストレスホルモンの放出を制御することができなくなってしまう。

 

しかし最近では、海馬は記憶や空間処理に関与する領域であると考えるのが主流だ。環境ストレスをサイコパスの原因と考えることは難しい。一方、よりサイコパスと関係の深い扁桃体や眼窩前頭前皮質が環境ストレスによって障害されるという結果は得られていない。むしろ、扁桃体基底核樹状突起の分岐を促進することが示されている。つまり、ストレスは偏桃体を損傷させるどころか強化させてしまう。

 

これらを考慮すると、ストレスは反応的攻撃の危険性を選択的に増大させるが、サイコパス特有の道具的攻撃には関与しないと考えられる。

 

 

愛着

「私、小さい頃に愛されなかったから、サイコパスなの。笑」

 

(もっともらしい根拠)

犯罪者は、愛着の発達が非常に高レベルで阻害されているというデータがある。

特異な愛着スタイルは行為障害、より一般的には攻撃性に関係している。

愛着が乏しいと道徳形成の過程が妨げられ、サイコパスに発展するという理論もある。

 

しかし、こうした愛着理論には問題がある。

  1. サイコパスだけでなく境界性人格障害自閉症などにも愛着の阻害を関連させている
  2. 親との相互関係が他者に対する共感性の発達に必須であるというのはもっともらしいが、いくつかのデータと適合しない。(たとえば、自閉症のように愛着に問題があるとわかっている人でも、他者が表す苦悩に対して嫌悪反応を示す)

 

サイコパスではむしろ、情動の機能不全の結果として愛着の問題が表れてくると考えられる。愛着は他者との情緒的なつながりによって形成されるものであり、サイコパスは情動学習が障害されているからだ。

 

 

環境ストレスと愛着について紹介したが、これらの誤用はありふれている。

すごく簡単にまとめると、虐待を受けた人はたしかにキレやすくなるが、サイコパスのように何かの目的のために他人を騙したり操ったりするといった攻撃性は現れない。また、親から愛されなかったからといってサイコパスになるわけではない。むしろ、愛されなかったことの原因がサイコパスである、と考える方が妥当だ。(もちろん、ほかの人格障害が関与している可能性もあるが)

 

とはいえ、虐待については海馬への影響の他にも遺伝的な環境要因や、サイコパスに特異的な学習に関与している可能性も捨てきれない。個人的には「神経伝達物質系に関連する遺伝子多型、胎児期におけるセロトニン等のモノアミン過剰状態による抵抗性の発現、それによる扁桃体、眼窩前頭前皮質などの機能不全がもたらす認知神経科学的変化、そして虐待等による道具的攻撃の学習」がサイコパシーの全体像ではないかと考えている。

 

明らかな自称サイコパスは、単なる憧れやコンプレックスの顕れと考えて良いだろう。また、自分がサイコパスでないかと”不安”になってる人も同様だ。

そのような人に対しては、むしろ進んでサイコパス扱いすることをお勧めする。上記の事実を捻じ曲げ、説得力をもって彼らをサイコパス呼ばわりすることで彼らの虚栄心が満たされる。さらに虐待や愛着の問題を掘り下げていき、悩みを引き出して同調すれば彼らを支配することもできるだろう。この点は以前に示した通りだ。

 

psycom.hatenadiary.jp

 

 

サイコパス -冷淡な脳-

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