サイコパスの対人関係

Leary(1957)の「対人関係理論」を発展させてBlackburn(1998)が提唱した「認知・対人関係モデル」では、サイコパシーの中心をなすのは他者との関係における「矯正」あるいは「修正」的な対人様式であり、「敵意の予期」が関与しているとする。この「対人関係理論」は、現在では“実証的裏付け”が得られている(Kiesler 1996)

「サイコパシー・ハンドブック」より

 

完全に「科学的」とは言えないが、実生活に即したサイコパスの対人様式としてこの理論を参考に、僕らにとって望ましい立ち回り方をおさらいしよう。「敵意の予期」が今回のポイントとなる。

 

このモデルでは、対人変数が「権力・支配」および「親和性」という直交次元の組み合わせで描かれ、この次元は対人関係における「動機的関心」を表す。(色付き文字に注目しよう)

たとえば「非難」「敵意と支配」が混合したものであり、「敬意」服従と親和性」が混合したものだ。

 

「固定的で柔軟性のない対人様式」がパーソナリティ障害の特徴であり、サイコパシーにおいてそれは「敵意的あるいは攻撃的-加虐的」様式である。

その相互作用は「批判的、屈辱的、懲罰的」で“捉えどころがない”ため、相手は恐怖を抱くことになる。一次的サイコパスはより「支配的」で、二次的サイコパス「敵意的で服従的」であると予想される。(Blackburn 1998) なお、一次的サイコパスは「感情面・対人面」におけるサイコパシーが特に顕著なもの、二次的サイコパスは「反社会性」が顕著なものと考えてよい。(僕らのターゲットはもちろん、一次的サイコパシーだ。二次的サイコパスは相手にしない方がよい。)

 

対人様式は、他者から引き出される「反応」によって維持される「自己呈示」の方式として概念化されている。Carson(1979)は、対人様式は「自己充足的予言」として機能すると提唱した。たとえば、敵意的な人間は、他者が敵意的な「反応」をすると予測するよう「学習」しており、“その反応が得られるような”行動をとっている。

 

サイコパスは他者が敵意的であると予想し、そのうえで彼らがとる対人様式によって"敵意的な反応が引き出される"と考えられる。あなたが挑発に乗って感情的になると、「ハッ、もうキレてやがるぜ」と鼻で笑われてしまうだろう。それはサイコパスのシナリオ通りの結末だ。

 

「自己充足的予言」に関する他の例は、「どうせ私のことなんて嫌いなんでしょ...」と言う女性だ。相手の男性に”嫌われるような”言動で相手が嫌悪を示すと「ほらやっぱり...」となる。このような女性は「自己充足的予言」のパターンを”自覚していながらも”辞められない、といった状況であることが多いため、そのパターン自体について共感を示すことで「理解者」の称号を得ることができ、支配することが容易になる。(「本当は分かっているの...」と言わせれば勝ちだ)

サイコパスについては、煽られることなく味方であることを暗に示すことができれば、「敵」というレッテルを貼られずに済むだろう。ご存知の通り、サイコパスの「味方」としてふるまいながら操作することが重要だ。具体的にはどうすればよいだろう。

見え透いたお世辞を並べ立てたり、彼らの要求を全て呑むことだろうか?

 

今までの記事を読んだ人なら、「違う」と答えるはずだ。 

 

こうした一つ一つの理解こそ、あなたが「味方」である印象を与える。あらゆる場面で「こんなとき、サイコパスならどうするか?」という質問を自分に投げかけるとよい。そのサイコパス的行動への理解が、彼らに良い印象を与える。それは同時に、サイコパスを見抜く技術も高まったということだ。

 

彼らの挑発に対して「どうしてそんなことをするんだろう...」と感じなくなればなるほど、彼らの存在が小さく見える。サイコパスは他者を「敵」と決めつけ、敵意を抱くように仕向ける。そしてその敵意を利用し操作する。賢明なサイコパスは、長期的には敵意が自分の利益にならないことを理解しているので、共感などによって取り込み支配する。無価値な共感に踊らされる愚かな人間が、自分とは相容れない性質を持つ者(=敵)であると考えることで「自己充足的予言」が成されるのかもしれない。

 

もちろん、行動の理由を完全に理解することは不可能だ。つまり、サイコパスに対してこのような理屈をこねたところで何の説得力もない。彼らは「対人関係理論」で自分が規定されることすら馬鹿馬鹿しいと思うだろう。重要なことは、それがたとえ厳密には正しくなくとも、彼らの行動について納得するに値する知見を得ることが、あなたの余裕と冷静なふるまいに繋がり、その行動上の違いがサイコパスに”他人とは異なる印象”を与えるということだ。

 

ちなみにこのモデルは経験的に支持されるものの、サイコパシーに関するすべての知見を説明できないのは明らかだ。この理論では、対人様式や性質を対人的経験に依存し「認知」を媒介として説明しようとする。すなわち、成人サイコパスの行動は「生得的な」遺伝要因の産物であると同時に、社会的学習の「経験」による産物であることを示唆している。その点における科学的な考察は以前に示した通りだ。

 

psycom.hatenadiary.jp

 

参考文献

サイコパシー・ハンドブック

サイコパシー・ハンドブック

  • 作者: 田中 康雄,クリストファー・J・パトリック,片山 剛一,松井 由佳,藪 盛子,和田 明希
  • 出版社/メーカー: 明石書店
  • 発売日: 2015/06/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログを見る