サイコパスを操作する

サイコパスから学ぶ

サイコパスと人格障害

今回は、サイコパス人格障害の共通点・相違点」について説明する。

さらに「身近に潜むサイコパスの本質は何か」という考えも紹介する。

 

 

精神医学の世界にはDSMと呼ばれる、精神疾患に関する統計やマニュアルを記載した本が存在する。多くの精神科医がこのDSMを参考にして「診断名」を下す。そこに「パーソナリティ障害(人格障害)」という領域がある。

 

「パーソナリティ障害」とは、社会的・文化的に期待されるものから著しく偏り、日常生活における苦痛や障害を伴う、持続的で柔軟性のない内的な経験・行動様式を指す。

 

パーソナリティ障害には「自己愛性」「反社会性」「演技性」などがあり、それぞれに特徴的な内的経験・対人様式がみられる。しかし、「サイコパス」というパーソナリティ障害は存在しない。実は、サイコパスという概念は「反社会性パーソナリティ障害」に組み込まれているのだ。 そこで、反社会性パーソナリティ障害に関する記述を見てみよう。(分かりやすく簡略化する)

 

他人の権利を無視し侵害するパーソナリティ。15歳以上が対象。

次ののうち3つ以上 が当てはまること。

 

反社会性:逮捕の原因となる行為を繰り返す。

 

虚偽性:繰り返し嘘をつく。自分の利益や快楽のために人を騙す。

 

衝動性:または将来の計画を立てられない。

 

易怒性または攻撃性:身体的な件かや暴力を繰り返す。

 

⑤自分または他人の安全を考えない無謀さ

 

無責任:仕事を安定して続けられない、経済的義務を果たさない。

 

良心の呵責の欠如:他人を傷つけたり、いじめたり、盗んだりしたことに”無関心”であったり、それを”正当化”する。

 

これを自己診断に用いるのはオススメしない。

その気になれば誰でも当てはまるからだ。

 

さて、この診断基準からサイコパスの特徴を見つけるのは簡単だ。

しかし、この基準を満たすような人が精神科医のもとを訪ねるだろうか? 彼らの多くは、まさにこの特徴ゆえに、訪ねようとは微塵も考えないだろう。ついに逮捕されるその日まで、彼らに診断名が下されることは無いのだ。

 

実際、サイコパスが人口の1%あるいは4%と言われるのに対し、それを包括する概念である反社会性パーソナリティ障害の有病率が0.2%~3.3%という矛盾がある。さらに、経営者においてはサイコパスは4人に1人(25%)ともいわれている。

 

特に「成功しているサイコパスは、自分のパーソナリティが「日常生活における苦痛や障害」をもたらしているとは思わないだろう。実際、彼らは苦痛や障害など感じていないのだ。そのためサイコパスは「パーソナリティ障害」の定義を満たさず、分類されることがないと考えられる。「反社会性のないサイコパス」という存在は障害のない人格、すなわち「個性」と捉えるしかないのだ。

 

ある一方では「クソ男」や「性悪女」と呼ばれ、また一方では「カリスマ」「才色兼備」などと呼ばれているだろう。そして「人格(仮面)を被り人を操る」という点においては持続的かつ柔軟性のない行動様式だが、大抵の人間はそんなことを知る由もない。

 

 

ここまでの説明で、あなたはサイコパスの特徴と「自己愛性」「演技性」「境界性」の関連が気になったかもしれない。実際サイコパスは傲慢かつ自己愛的で、仮面を被り演技をし、他人を操作することが多い。

 

ここでもDSMの記述が参考になる。

実は、彼らの傲慢な態度や演技をする動機は、自己愛性や演技性のそれとは異なるのだ。共通点相違点に注目して読んで欲しい。

 

他のパーソナリティ障害が反社会性パーソナリティ障害と共通の特徴をもつために、この障害と混同するかもしれない。したがって、これらの障害をそれぞれの特徴の違いに基づいて区別することが重要となる。 

 

しかし、もしその人の性格的特徴が反社会性パーソナリティの障害に加えて他の障害の特徴をもつ場合には、これらすべての診断を下すことができる。

 

「自己愛性」との共通点は、非情さ、口達者、表面的、搾取的、および共感の欠如といった傾向である。

しかし、自己愛性には、衝動性、攻撃性、および嘘つきといった特徴は含まれない。

さらに、反社会性の人は他者の賞賛や羨望を得たがることはないかもしれないし、自己愛性の人には幼少期の問題行動や成人期の犯罪行為がない。

 

「演技性」との共通点は、衝動的、表面的、刺激を求める、無謀、誘惑的、操作的といった傾向である。

しかし、演技性の人の方が自己の情動を誇張することが多く、反社会的行動をとることがない

さらに、演技性の人が他人から世話をしてもらうために操作的であるのに対して、反社会性の人は利益や権力や物質的満足を得るために操作的である。

 

「境界性」との共通点は比較的少ない

反社会性の人は、境界性の人と比べて情動的に不安定になることは少なく、攻撃的であることが多い。

 

前半部で指摘されているように、サイコパスと他のパーソナリティ障害の両方の特徴をもっている可能性も十分にある。そして僕ら自身にも、ある時にはこうした特徴がみられることだろう。

 

他のパーソナリティ障害と区別するポイントは、①情動的に希薄であり ②情緒的な要素よりも物質的な利益を優先し ③反社会的な場合には衝動性、攻撃性の側面が強く出る という点だろう。

 

彼らは精神科医ですら欺くことができるので、仮に存在しても「サイコパス」という診断名が下されることはないだろう。そして彼らは今も僕らの周囲で身を潜めている。この事実を強調した ロバート・ヘアの著書が「診断名サイコパスだ。

 

しかし最近では、あまりにも「身近に潜んでいる」ということが強調され、容易に他人をサイコパス呼ばわりし鑑識眼に自己満足する風潮がある。

これは僕自身にも当てはりそうだが、それ以上に重要なことは、「自分のサイコパスを操作できているのか」という問題だ。

 

誰もがサイコパスになる時がある。

信頼はなぜ裏切られるのか。で書いたように、「状況」は人を簡単に裏切らせる。サイコパスは倫理を学べるか。で書いたように、金銭などの利益に目が眩んだり権威に屈して倫理を犯すこともある。サイコパスと自己愛 で書いたように刹那的な快楽を求め、他人をモノ扱いすることがある。

 

ネットの匿名性、合理主義、競争原理、理不尽なシステム、拝金主義、正義感の強さ、戦争のゲーム化・・・ 身の回りには、あなたのサイコパシーを目覚めさせる要因が多く潜んでいる。 それについて善悪を述べるつもりはないが、過度のサイコパシーは他人を傷つけ、巡って自分の利益を損なうと僕は学んでいる。

 

すなわち、僕にとってサイコパスは「パーソナリティ障害」だ。そのため僕の行動原理の1つとして「自分のサイコパスを操作しながら他人のサイコパスも感じ取り、適切な行動を取る」という明確な基準ができた。

 

大げさに聞こえるかもしれないが、どれも本心のつもりだ。

あなたはどう考えるだろう。

 

参考

 

DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引

DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引

 

 

 

診断名サイコパス―身近にひそむ異常人格者たち (ハヤカワ文庫NF)

診断名サイコパス―身近にひそむ異常人格者たち (ハヤカワ文庫NF)