サイコパスを操作する

Twitter: @KranGeist

反社会性サイコパスの脳

暴力犯罪の約25%は、サイコパスによるものだ。

しかし、サイコパスの殆どは暴力犯罪に加担しない。これは、暴力犯罪の発生率とサイコパスの発症率を比較すると明らかである。「暴力の解剖学」で紹介したように、反社会性サイコパスと一般的なサイコパスの違いは、前頭前皮質の機能」にある。

 

今回は、"Prefrontal Structural and Functional Brain Imaging findings in Antisocial, Violent, and Psychopathic Individuals: A Meta-Analysis" から、反社会性サイコパスの脳に見られる特徴をレビューしてみよう。

 

研究対象は「暴力犯罪者の前頭前皮質」であり、全43件の論文がメタ分析された。前頭前皮質はいくつかの下位領域に分けられ、それぞれの機能が両側半球について調べられた。反社会性サイコパスに特徴的な機能的異常は、次の3つである。

 

①左外側前頭前皮質 (左DLPFC):高度な認知機能 (注意、計画、自己抑制など) に関与する。左DLPFC損傷患者は目的志向行動 (実行機能) に問題がある。ADHDは注意欠陥や多動性が特徴の障害であり、DLPFCや線条体ドーパミンレベルが低いと言われている。この領域は、いわゆる「動作性IQ」との関連が大きい。

 

②右眼窩前頭前皮質 (右OFC):感情処理や意思決定、社会的行動に関与する。右OFC損傷患者は怒りっぽく、抑制に欠けた人物であることが多い。「逆転学習」が困難であり、ハイリターンな選択肢がハイリスクに変わっても、柔軟に反応を切り替えることができない。簡単にいえば、失敗から学ぶことが難しい。機械学習を用いた最近の研究では、OFCの厚みにもADHDの特徴が顕れることが分かっている。なお、"左”OFC損傷患者には、これらの機能異常は見られない (Bechara and Denburg, 2002). 

 

③右前帯状皮質 (右ACC):葛藤の検出やモニタリングに関与する。京大グループの研究では、サイコパスがためらいなく嘘をつく傾向とACCの活動低下に相関が見られた。つまり、サイコパスは「嘘をつくか正直にふるまうか」という葛藤が生じないために、平然と嘘をつくことができるのではないかと考えられている。ただし、この研究で示されたのは「"左”ACCの活動低下」であることに注意したい。より反社会的な選択肢間における葛藤では、右ACCの活動低下がより特徴的になるのかもしれない。

 

多くの研究がサイコパスと内側前頭前皮質 (VMPFC)の機能に関連を示しているものの、本研究ではギリギリ有意差が出なかった。これについては、サンプル数などの統計的問題が指摘されている。